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ベトジェットに英国で資産凍結命令――運航停止ではなく、5年続く債務回収の一段階 2026年10月22日時点の情報に基づく

筆者:@編集デスク

**要約**:2026年10月15日、英国の裁判所がベトジェットに世界資産凍結命令を出しました。リース債務の未払いが約2億5,000万ドルに上る5年来の紛争の一段階で、運航停止を命じるものではありません。ベトナム航空は別会社で無関係です。SNSで広がる「即運航停止」という情報は、一次情報からは裏づけられません。今後は同社の対応次第です。
## 何が問題になっているのか
2026年10月15日、英国(イングランド・ウェールズ)高等法院の商事裁判所は、ベトナムの格安航空会社ベトジェット(VietJet Aviation JSC)に対し、世界資産凍結命令(WFO)を出しました。申立てをしたのは、航空機リース会社のFW Aviation(FWA)です。FWAは、英国の投資会社FitzWalter Capital傘下の会社です。
判決番号は [2026] EWHC 2633 (Comm) で、英国の公式サイトで全文を読めます。
ベトジェットが払っていないのは、約2億5,000万ドル(元本・利息・費用の合計)の判決債務です。これは、4機のエアバスA321のリースに端を発しています。
## 5年前から続く紛争です
これは「たった今」起きた事件ではありません。きっかけはコロナ禍にあります。ベトジェットは、運航が止まった時期にリース料を払えなくなりました。2021年10月に貸し手が契約の解除を通知し、その後、権利がFWAに移りました。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年10月 | リース契約の解除通知。その後、権利がFWAに移る |
| 2022年 | FWAがロンドンの高等法院に提訴 |
| 2023年 | 4機の扱いをめぐり、英国の裁判所が仮の差止め命令 |
| 2024年7月 | 責任判決(ベトジェット敗訴) |
| 2025年4月 | 約1億8,000万ドルの支払いを命じる判決 |
| 2025年6月 | 控訴院が控訴を棄却 |
| 2025年7月 | 世界資産凍結の最初の申立ては却下 |
| 2026年5月 | シンガポールで同社機9機の差押え命令 |
| 2026年9月30日 | 管財人の任命を原則として認める判断 |
| 2026年10月15日 | 世界資産凍結命令(今回) |
今回の命令は、数年にわたる債務回収の手続きの最新の一歩です。この間もベトジェットは運航を続けています。
## なぜ凍結が認められたのか
判決によると、ベトジェットは「払えない」のではなく「払わない」債務者です。時価総額は約38億ドル、総資産は約54億ドルとされています。それでも、支払ったのは2025年5月の200万ドルだけです。
決め手になったのは、資産の移転です。ベトジェットは、将来受け取る航空機(約300機分の発注)に関する経済的権利のほぼすべてを、ケイマン諸島の関連会社Angelica Holding Limited(AHL)に移していました。判決は、AHLに事務所も従業員もなく、実体が乏しいと見ています。移転の対価も、実質的には意味のないものだと評価しました。これらの取引は、裁判所への資産開示でも長く明らかにされていませんでした。
また、シンガポールで同社機の差押え命令が出ると、ベトジェットは当該機のシンガポール便を減らし、事実上止めました。ベトジェット自身も、差押えを避ける目的があったことを認めています。
2025年7月に最初の申立てが却下された後、これらの新しい証拠が出てきたため、2回目の申立てが認められました。
## 前提:ベトジェットとベトナム航空は別会社です
ここは混同が多い点です。今回の件は、ベトジェットだけの問題です。
**ベトジェット**

- 位置づけ:民間のLCC(2011年就航)
- 今回の件:判決の被告

**ベトナム航空**

- 位置づけ:ナショナルフラッグキャリア(国の資本の影響が強い)
- 今回の件:無関係

ベトナム航空は裁判の当事者でも、凍結の対象でもありません。ベトナム航空の便は、この件の影響を受けません。
また、命令の相手はベトナムの法人ベトジェット(VietJet Aviation JSC)です。タイのベトジェット(Thai VietJet)は別の法人で、確認できた範囲では、タイ側の機材を凍結したり運航を止めたりする命令はありません。
## 「直ちに運航停止」は必ずしも正しくありません
SNSでは「運航停止になる」という趣旨の投稿を見かけます。しかし、判決と報道を見る限り、そのような内容は裏づけられません。
- 判決は、凍結命令に、通常の事業活動(ordinary course of business)を認める例外条項が付いていると述べています。対象は、ベトナム国内の資産と、ベトナム国外にある運航用の資産です。
- 命令は運航の停止を求めるものではなく、発注済みの航空機の契約が取り消されたわけでもありません。
- 複数の報道が、ベトジェットは通常どおり運航しており、機材の運航停止や路線の取り止めを示す情報はないと伝えています。
- 報道によると、国外にある発注済み機材、整備積立金、リース保証金を扱うときは、裁判所の許可が必要になるとされています。
### 注意点
- 命令の最終的な条文は確認できておらず、例外条項の細部は報道ベースの理解です。
- 特定の路線では影響があり得ます。たとえばシンガポールでは、今回の命令とは別に、同社機の差押え命令が出ています。
- 管財人(receiver)の任命は別の手続きです。事務所の発表では10月15日に任命が決まったとされていますが、他の報道は最終的な命令はまだ保留だと伝えており、情報が割れています。
## まとめ:今後はベトジェットの対応次第です
今回の命令は、債務を回収できるよう資産を守るための措置です。運航を止める命令ではなく、ベトナム中の飛行機が使えなくなる話でもありません。ベトナム航空は無関係で、通常どおり運航しています。
この紛争は5年前から続いており、今回の命令で突然状況が変わったわけではありません。今すぐ大混乱に陥る話でもありません。
今後を左右するのは、主に次の点です。
1. ベトジェットが債務を支払うか、支払い計画を示すか
2. 管財人の任命が最終的に決まるか
3. 凍結の範囲(特にベトナム国内の資産)がどう調整されるか
4. 11月13日に予定されている追加の審理
ベトジェットは、2025年4月の時点では「4機に関する例外的な紛争」だという立場でした。今回の命令については、報道ではコメントを控えたとされています。会社の公式な見解は、公表され次第の確認が必要です。
ベトジェットを予約している方は、SNSの断片情報で判断せず、ベトジェットの公式発表と、ご自身の便の運航状況を確認するのが確実です。
## 出典
- [FW Aviation v VietJet [2026] EWHC 2633 (Comm)(判決全文・英国National Archives)](https://caselaw.nationalarchives.gov.uk/ewhc/comm/2026/2633)
- [Slaughter and May:WFO認容の発表](https://www.slaughterandmay.com/recent-work/fw-aviation-on-successful-worldwide-freezing-order-application/)
- [Brick Court Chambers:判決解説](https://www.brickcourt.co.uk/news/detail/commercial-court-grants-worldwide-freezing-order-against-vietjet-in-fwa-litigation)
- [Bloomberg(2026年10月16日)](https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-10-16/vietjet-hit-with-global-asset-freeze-in-fitzwalter-debt-dispute)
- [The Nation(タイのベトジェットとの別法人の説明)](https://www.nationthailand.com/business/corporate/40072556)
- [The Aviation Hub(凍結範囲と通常業務の扱い)](https://theaviationhub.co.uk/vietjet-global-asset-freeze-leasing-debt/)
- [AeroTime](https://www.aerotime.aero/articles/vietjet-faces-worldwide-asset-freeze-over-250-million-aircraft-leasing-debt)
- [Aerospace Global News(運航継続の報道)](https://aerospaceglobalnews.com/?p=53866)
- [Reuters配信(2025年4月、ベトジェット声明)](https://www.thestar.com.my/aseanplus/aseanplus-news/2025/04/18/vietnam039s-vietjet-owes-investment-fund-over-us180mil-uk-court-rules)
※ベトナム航空の位置づけは一般的な知識に基づくもので、出資比率などの最新データは確認していません。

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