ベトナム、18歳未満にも臓器提供の道へ 法改正案の中身と、国民が安心できる制度づくりへの期待

筆者:@編集デスク
## 要約
ベトナム保健省は臓器提供法の改正案で、18歳未満にも死後の提供を認める方針です。条件は本人の生前の意思と親や後見人の同意で、生体提供は家族以外なら25歳以上とする案も出ています。背景には提供者の不足と、提供を装った臓器売買の摘発があります。議会でも自発性と配分の透明性を求める声が上がり、国民が安心できる慎重な制度づくりが問われています。
## 臓器提供の年齢制限見直し
ベトナムで、臓器提供の年齢制限を見直す法改正が議論されています。現行法で提供の登録ができるのは、完全な民事行為能力を持つ18歳以上に限られています。保健省の改正案は、この枠を18歳未満にも広げるものです。
「子どもからの臓器提供」という言葉だけが先に伝わると、自分の子どもや家族が対象にされるのではないかと身構える人が出るのは、自然な反応だと思います。SNS上でも、そうした不安の声が見られます。そこでこの記事では、報じられている改正案の中身を整理し、何が条件とされ、議会で何が議論されているのかを確認します。
### 改正案で何が変わるのか
まず死後の提供です。保健省の案は、18歳未満の人についても、死後に組織や臓器を提供できるようにするものです。報道によると、条件は二つあります。一つは、本人が亡くなる前に提供の意思を示していたこと。意思表示は、親や後見人への口頭、または書面で行われている必要があります。もう一つは、親や後見人が同意していることです。現行法は脳死後の提供だけを認めていますが、改正案は循環器死後の提供も加える内容です。
次に、生きている間の提供です。案では、家族への提供は18歳以上、家族以外への提供は25歳以上とされています。15歳以上18歳未満については、再生可能な細胞や組織に限り、本人と法定代理人の同意があれば提供できるという案が報じられています。
### なぜ見直しが必要とされているのか
背景にあるのは、提供者の少なさです。国家臓器移植調整センターの統計では、ベトナムで約40年かけて記録された脳死者からの提供は、およそ308例にとどまります。保健省によると、移植の約94%は生きている人からの提供です。
専門家は、18歳未満の脳死者の臓器は、臓器不全に苦しむ子どもの患者と生物学的に適合しやすいと説明しています。また、フランスなど欧州の一部の国では、親や後見人の書面同意を条件に、18歳未満の死後提供が認められているとも紹介されています。
### 議会では慎重論も
改正案には、国会議員からも慎重な意見が出ています。カマウ省選出のチャン・ティ・ホア・リー代議員は、未成年は特別な法的保護が必要な層であり、提供者本人の独立した意思の確立が重要だと指摘しました。アンザン省選出のチュオン・ホー・ハイ代議員は、15歳以上18歳未満の生体提供について、対象を実の兄弟姉妹に絞ることなどを検討するよう求めています。
9月29日の審議では、提供の自発性と安全性を最大限に守ること、そして臓器配分の調整を透明にすることを求める意見が出ました。
### 売買偽装への警戒
保健省は、生体提供の最低年齢を18歳とする現行の規定では、臓器売買が提供を装って行われるのを防ぐには不十分だと見ています。25歳という新たな基準には、その対策の意味もあります。
実際に、摘発は続いています。2026年8月、ホーチミン市警は、提供を装った腎臓売買をめぐる3件の事件で11人を訴追しました。捜査当局によると、関係者は書類を偽造し、売り手と買い手に親族関係などを口裏合わせさせていました。2025年9月にはハノイで、腎臓1個を約4万5500ドルで仲介していた組織が摘発されています。捜査当局は、この組織が25〜30件の移植に関わったと見ています。
こうした事件があるからこそ、制度の側が「自発的な提供」をどう確認するかが重要になります。
### 配分のルールも案として示されている
保健省は、移植を受ける人の優先順位の案も示しています。順に、緊急症例、子ども、過去の組織・臓器提供者、提供者の第一度近親者、そして全国待機リストでの待機期間が最も長い人です。
### 安心できる制度づくりを
改正案は、今後、第16期国会の第2回会期で審議される見通しです。
臓器提供は、救える命を増やす可能性がある一方、本人と家族の信頼の上にしか成り立ちません。ここからは筆者の見方です。とくに子どもが関わる制度では、次の点が丁寧に作り込まれる必要があると考えます。
- 子どもの意思を、誰が、どのように確認し、記録するのか
- 救命のための治療と、提供の打診を、別の担当者が行う仕組みになっているのか
- 臓器の配分記録を、第三者が検証できる形で残し、公開できるのか
国民が心配しているのは、自分や家族、とりわけ子どもが利用されるのではないかという点でしょう。その不安は、制度の中身を明らかにし、運用を検証できる形にすることでしか解消できません。年齢を広げる前に、信頼を築く土台を固める。国民が安心できる、慎重な制度づくりに期待したいと思います。
## 出典
- DTiNews「Vietnam proposes allowing minors to donate organs after death」(2026年6月)
- Tuoi Tre News「Vietnam ministry proposes stricter age rules for living organ donors」(2026年8月14日)
- Vietnam News「Health ministry proposes restricting living organ donations to family members over 18」(2026年8月17日)
- Vietnam News「Health ministry proposes amending law to promote organ donation」(2026年8月4日)
- Vietnam News「Ministry proposes eight policy pillars for amended organ donation law」(2026年8月4日)
- VietnamNet「Lawmakers propose allowing children under 15 to donate tissue to siblings」
- 人民代表紙(daibieunhandan.vn)「Hoàn thiện hành lang pháp lý cho hiến, ghép mô, tạng」(9月29日審議)
- 人民代表紙「Bài 1: Làm giàu thêm nguồn hiến」(国家臓器移植調整センター資料)
- Vietnam News「Eleven prosecuted in alleged kidney trafficking ring in HCM City」(2026年8月18日)
- Tuoi Tre News「Police bust Hanoi kidney trafficking ring that sold organs for $45,500 each」(2025年9月)
- Vietnam News「Amending law on organ donation to help patients」(2025年7月9日)
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