Rikkeisoftの「脱・人月商売」は本物か――専門家は何人育ったのか

筆者:高橋 健太(AI編集部・AIライター)
Rikkeisoftの日本進出10周年を、日越協力の美談で終わらせてはいけない。問うべきは、技術者の供給から専門性を売る会社へ変わるという宣言に、どこまで実力が追いついているかだ。
人月商売からの転換を読む
10月9日のイベントを伝える同社発表はAIを戦略の中心に置く。AIに触れていないのではない。しかし、AIが従来の人月商売をどう変えるのか、収益への影響は説明していない。
AIで売上の作り方が変わる可能性
以下は編集部の推論だ。仮にAIで同じ開発を少人数・短期間でこなせれば、人数と作業時間に依存する売上は伸ばしにくい。成果や運用責任に値段を付けられる領域へ進む動機が生まれる。今回の転換は、その備えとして読むことができる。ただし、同社の失注や稼働率低下を確認したわけではない。
育成の数字と専門性の実態
過去の数字も見たい。同社は2020年に「2025年までに社員1万人」を掲げたが、現在の企業紹介は2,000人超。集計時点・範囲の違いを詰める必要はあるものの、人数拡大の壮大な目標と現在の説明には隔たりがある。「次の成長」を語るなら、前の目標の検証も必要だ。
受講者と専門家は同じではない
では、専門家は育ったのか。会社説明では教育部門の育成人数は4年間で2,500人超。ただし、受講者数を、卒業・就職した人数や現場を任せられる専門家数に読み替えてはいけない。確認した公開資料から、サイバー分野の修了者数、実務配属数、定着率は特定できなかった。
専門性が皆無という話でもない。AI部門は2019年、DigitalとAcademyは2022年の設立とされる。セキュリティのサービスページもOSCPやCISSPなどの資格を持つ専門家を掲げる。ただ、その人数、所属、経験年数、自社育成か採用かは分からない。資格名の列挙と、継続して案件を支えられる組織の厚みは別だ。
提携で埋める専門性と、発注者の判断
核心はラック側の発表にある。高度な技術と運用実績を持ち寄るのはラック。リッケイ側の強みは多言語人材、海外での提供体制、採用・教育基盤だ。今後の人材育成も明記され、具体的な役割や条件は協議を進めるとしている。MOU締結を、専門家集団とサービス体制が完成した証拠にしてはいけない。
分業が実力になる条件
私の読みは「オフショアを捨てた」より、「既存の人材供給基盤に、提携先の専門性を接続して売り方を変える」だ。これは合理的な分業にもなり得る。逆に、専門判断を提携先に依存し、自社は要員供給にとどまるなら、看板が変わっても商売の中身は大きく変わらない。
ラック社長は、海外拠点の対策・運用強化を望む顧客の声を紹介し、発表は現地の人材不足を挙げる。以下は筆者の考察だ。ベトナム拠点も担当する日系企業のIT担当者には、多言語の運用支援で本社と現地の連絡を任せられれば、調整負担が減る期待が生まれる。一方、両社の分担が曖昧なままでは、障害時の連絡先や判断者を探す負担が顧客に残り、委託をためらう理由になる。人手不足の職場ほど、支援人数より事故時の窓口と判断権限を契約前に確かめたい。
発注者が聞くべきは、誰が設計し、誰が事故対応を判断し、誰が責任を負うのか。育成人数より、担当者の実務経験、配属実績、顧客が確認できる成果を見たい。今回確認できたのは、専門性を高める提携と構想である。それが実力になったかは、これからの実績で測る。
出典と確認範囲
出典:Rikkeisoft、ラック各社公式資料
https://rikkeisoft.com/rikkei-global-summit-2026-the-next-x-building-on-a-decade-of-growth-creating-a-new-chapter/
https://www.lac.co.jp/news/2026/10/13_press_01.html
https://rikkeisoft.com/rikkeisoft-becomes-a-corporation/
https://rikkeisoft.com/rikkei-story/
https://rikkeisoft.com/our-ecosystem/
https://rikkeisoft.com/jp/cybersecurity/
公開日:イベント記事2026年10月12日、ラック発表13日。旧目標2020年10月29日。企業紹介は更新日未確認。
出来事:MOU締結10月8日、イベント9日。
確認範囲:2026年10月13日に公開資料を照合。社内資料・顧客への取材は未実施。経営動機は推論。