日系店を信頼しても市場へ ベトナム首都圏200人調査を読む

筆者:高橋 健太(AI編集部)
日系店の食品は安心だと思っても、市場での買物は続ける。InfoBankを運営するInfoBaseが10月14日に公表した調査は、そんな併用を示した。日系小売の担当者には、信頼を得ることと、日々の支出を自店へ移してもらうことの違いを考える材料になる。
安心への評価と市場利用は両立する
64.9%の分母は97人
同社によると、日系店舗の食品安全性を信頼すると答えた97人のうち、過去1か月に伝統市場を利用した割合は64.9%。全回答者200人では55.0%だった。コンビニ利用70.0%、個人商店65.5%も報告され、利用業態は平均3.45だった。
ただし、64.9%と55.0%は独立した二集団の比較ではない。97人は200人に含まれ、安全性を信頼したため市場利用が増えたとはいえない。また利用の有無を尋ねた数字であり、購入金額や売上シェアでもない。「市場から日系店へ乗り換えたか」を測るには、支出額や頻度の変化が別途必要だ。安全性への回答も消費者の印象で、食品の検査結果ではない。
首都圏の若年層に限った結果
調査は10月5〜10日のインターネット調査。対象はベトナム首都圏在住の15〜34歳で、15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳、30〜34歳を各50人、各区分の男女を25人ずつ集めた。海外モニターパネルを用いている。
年代を均等にした200人は、全国の人口構成をそのまま写す標本ではない。回答者の募集・選別の詳細や重み付けは公開資料から確認できず、ホーチミンや地方、高齢層へ広げられない。在住日本人の買物傾向を測った調査でもない。
「日本の商品」から、選ばれる条件へ
清潔さだけで買物先は決まらない
日系店舗への印象では、食品安全性への信頼48.5%、清潔さ47.0%に対し、日本商品が多いとの回答は38.0%。販売ページの公開抜粋では、来店頻度を高める条件として価格49.0%、近さ42.5%が挙がる。日本商品を求めることと、店へ通える条件は分けて考えたい。
支出を抑えたい人には価格差、仕事や家事で時間のない人には往復時間が負担になる。価格と距離への回答を踏まえると、同じ安心な店でも、家計や予定によって通いやすさは変わると考えられる。市場と日系店を併用する人を「安全への意識が低い」とみなす根拠もない。家計や移動条件の違いを確かめてこそ、店が補える不便が見えてくる。
店舗側も値下げだけで集客すれば、清掃や商品管理に必要な費用との両立が課題になる。担当者が確認すべきなのは、自店の商圏で誰が何を買い足し、どの商品なら移動の手間に見合うかだ。日本商品を増やす案にも、仕入れ費用や売れ残りを含めた採算確認が要る。これらは経営上の検討点であり、本調査が各店の利益を測ったわけではない。
調査を売る会社の提案として読む
発表元は日本企業向けの経済情報メディアを運営し、39ページの完全版を税込2万4800円で販売する。無料サンプルも案内しており、発表には資料販売へ導く役割がある。商業資料だから無価値なのではなく、示唆と実証を区別して使う必要がある。
同社は食卓向け総菜などを提案するが、投入後に来店や利益が増えたという実績ではない。公開結果を仮説の出発点にし、自店の購買記録や顧客への確認で試す。信頼を売上につなげる条件は、国全体の印象より、店の近くで暮らす人の生活にある。
出典と確認範囲
出典・媒体:株式会社InfoBase『ベトナム若年層の小売利用と日系店舗への評価に関する調査(2026年下半期)』の企業発表(PR TIMES)と販売ページ。
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000181360.html
https://report.infobank-vn.com/products/consumer-2026
公開日:企業発表2026年10月14日。販売ページの公開日は未記載。
出来事の日付:調査10月5〜10日、報告書発行10月12日。
確認範囲:公開された集計・調査概要・販売条件。完全版PDFと個票は未確認。数値は同社の報告で、当編集部による再集計ではない。