ベトナムの買い物、AIに何を聞く? 候補を絞る人と、店で教えるAI

筆者:高橋 健太(AI編集部)
「どの炊飯器がいい?」と聞く相手が、店員さんだけではなくなってきました。ベトナムの生成AIを暮らしから見ると、目に入るのは巨大な計算設備より、買う前の比較や、店の人を教える仕事です。文章や答えを作る生成AIは、具体的にどこで役立ち、誰の負担を減らしているのでしょうか。
買い物の前、AIに任せたいのは「比較」
調査会社Q&Me関係者の[10月1日のnote原投稿](https://note.com/kuroken_0306/n/n37a0f7ae5ff1)は、2026年9月にハノイ・ホーチミン市の20〜49歳の生成AI利用者200人へ聞いた結果を紹介しています。購入前の商品調査に使う人は58%。質問内容では長所・短所の整理が67%、商品・ブランド比較が62%でした。
面白いのはその後です。AIで調べた後にShopee・Lazadaを確かめる人は60%で、勧められた商品をそのまま買う人は15%。利用者が求めているのは、購入の丸投げより、迷う候補を減らす助けだと読めます。これは都市部のAI利用者に限った調査で、全国の普及率ではありません。発信者は調査サービスを提供する側です。
炊飯器なら、質問をこう変えてみる
たとえば、次は読者が試すための質問例です。調査参加者の実話ではありません。
「ベトナムで買える炊飯器を比較したい。二人暮らしで、置き場所は狭い。価格だけでなく、容量、保温、内釜の手入れ、保証を比べて。参照した商品ページも示して」
出てきた二つの候補から一つを選ぶ前に、販売ページで型番を合わせます。同じブランドでも容量や付属品が違えば比較は変わるからです。送料込みの支払額、保証を受ける窓口、返品条件もここで確認します。AIが示す商品説明と、実際に注文する店の条件をつなぐ一手間です。
検索語を思いつきにくい人には、比較軸を作ってくれること自体が助けになりそうです。一方、二つのページを読むだけで決まる買い物なら、質問と確認に時間をかける方が遠回りにもなります。便利さは、答えの長さより、迷う時間が短くなるかで考えると分かりやすくなります。
売る側では、店の人を教えるAIも
ベトナム企業のAIが、ロボットなどの機械に限られるわけではありません。[NVIDIAの導入事例](https://www.nvidia.com/en-us/case-studies/fpt-smart-cloud-levels-up-customer-service-operations/)には、薬局チェーンLong ChauがFPT AI Mentorを使う例があります。社内知識をもとに学習内容を作り、薬剤師がスマートフォンで毎日5分の問題に取り組む仕組みです。
生成するものは、接客を練習する問題
同資料は、大規模言語モデルが業務場面の質問と回答を作ると説明しています。生成した回答は従業員の回答を評価するために使い、従業員本人には見せません。単に教材を配信するだけでなく、社内の知識から練習材料を作るソフトの用途があるのです。
ただしGPU供給元の販促事例であり、独立した効果測定ではありません。教材生成の仕組みを、客への回答が常に正しい証明や、医療判断をAIへ任せてよい根拠に広げることはできません。
店側から見れば、繰り返し教える負担を減らし、接客のばらつきを抑える狙いがあります。一方で、材料となる社内情報を誰が直し、誤った教材に誰が気づくかという仕事は残ります。筆者が注目するのは、AIそのものを売る企業と、教育に使う小売企業とでは、成功を測る物差しが違う点です。前者の契約が増えても、後者の教育や接客が改善したとは限りません。
「国産モデルを作る」と「店で使う」の距離
自社で巨大なAIを一から開発しなくても、既存のモデルに社内資料を検索させ、その内容から答えを作る方法があります。これがRAGと呼ばれる仕組みで、前の導入事例にも登場します。
ソフト開発会社NKKTech Globalも[7月15日のnote](https://note.com/nkktech/n/n6464ffd070ad)で、社内マニュアルの検索や在庫情報とつなぐ対応案を紹介しています。ただし受注につながる発信であり、これだけで中小企業全体への定着を裏付けるものではありません。
お金がかかる場所を分けて見る
既存モデルの利用にも、計算サービス代、資料の整備、システム連携、回答の点検という費用があります。紹介した導入事例には契約総額がなく、小さな店でも採算が合うかは分かりません。自社の問い合わせを何件減らせるか、例外を人へ渡せるかまで、試して見積もる必要があります。
ベトナム語モデル[PhoGPTの開発元資料](https://github.com/VinAIResearch/PhoGPT)では、公開モデルを所定の形式で読み込むだけでもGPUメモリー7GBが必要とされ、推論・計算の弱さや誤った出力も明記されています。この容量は開発総費用や業務に必要な設備一式を示す数字ではありません。「ベトナム語に対応する」ことと、自分の店の仕事に十分なことの間には、評価と運用があるのです。
買う人には、条件を言葉にして候補を絞る道具。売る人には、説明や教育を作る道具。その距離感で見ると、生成AIの話は身近になります。日系の小売店でも、まず商品説明と保証条件をそろえ、一つの作業で使ってみる。派手な導入宣言より、客と従業員がどこで困らなくなるかに、試す価値を見つけられそうです。
出典・日付・確認範囲
出典URLは各節の直接リンク。Q&Me関係者のnoteは2026年10月1日公開、調査は同年9月。NKKTechのnoteは7月15日公開。両投稿の更新日は未確認です。NVIDIAの事例は公開・更新日未確認で、現在の全店舗展開状況を示す資料としては使っていません。PhoGPTは2023年の研究に始まる資料で、README更新日は未確認です。
確認範囲:2026年10月16日に調査原投稿、提供・開発元の説明を照合。買物の質問は編集部の利用例で、実機性能、個別契約の料金、全国普及率、売上への因果効果を確認したものではありません。